ベトナム

【インタビュー】ホーチミンの高島屋で海外インターンシップを経験 / 明治大学3年生・石井祐之介さん

「日常を楽しむためのライフスタイルレシピ」をお伝えするwebマガジン、【ikiru LAB.】。ワタシ(ikiiki)自身の海外旅行話や、国内外で見てきたモノ・コトをお伝えしてきましたが、今回は、海外生活の経験を自身の活動へと生かすアクションを起こしている”次世代”へインタビュー

今回インタビューに応じてくれたお相手は、現在、明治大学に在学中の石井祐之介さん。

石井さんとの出会いは、2019年6月 ベトナム・ホーチミンにて。当時彼は、大学を休学してホーチミンでインターンシップをしていました。

そもそも何故ワタシがホーチミンで彼と出会ったのかというと、ベトナムに住む中学時代の同級生・Tくんに会いに行ったことがはじまり。Tくんは、日本で就職した企業でいまの奥様と出会い、その後奥様とともに世界一周の旅へ。一度日本へ帰国し国内就職しましたが、再び海外へ。今はベトナムで、日系企業に従事しながら家族3人で暮らしています。ホーチミンへ訪れたとき、仕事仲間として紹介してくれたのが石井さんでした。

大学休学、そしてホーチミンで生活することを選んだ石井さんに、海外でのインターンシップの魅力や体験談を聞いてみました。


ごく普通の大学生活から一念発起、単身ホーチミンへ

ikiiki:お久しぶりですね。では、簡単に自己紹介をお願いします。

石井さん:大学3年生の石井祐之介です。ご紹介の通り、大学を休学して1年間ベトナムで海外インターンを経験し、現在は東南アジア一周をしています。現在は、 ラオス首都ビエンチャンにおります(※)。

※当インタビューは、2020年2月にリモートで実施したものです
※インタビュー時点では、石井さんのホーチミン生活は約1 年、その後拠点をバンコクに移したばかりでした
※新型コロナウィルスの世界的流行を起因に、海外渡航が難しいなどの情勢を鑑み一時的に本掲載を見送っておりましたが、2020年10月、このたびインタビュー内容を掲載させていただきます
※当インタビューのあとはどんな活動を経たのか、最新の活動状況など、追ってインタビュー記事を掲載する予定です

ikiiki:大学へ入学する以前から、「海外でインターンをしてみよう」と計画していたんですか?

石井さん:実は、インターンシップ制度自体あまりよく知りませんでした。でも、入学当時に「1年以上海外経験をしてみたい」とは思っていたんです。次第に、アルバイトや学園祭実行委員会、学校の試験勉強などに日々追われていきました。

学園祭が終わり、色々なことを思い直す機会が増える中で「最初の志は?海外はどうした?」と自問し、「海外へ行かないと!」と思い至りました。

ikiiki:大学生も何かと忙しいですもんね。

石井さん:忙しいという理由から語学勉強を意識してこなかったので、学校の成績は最悪。英語なんて皆無状態。当然、大学の留学相談所職員には鼻で笑われるほどでした…。

ikiiki:あちゃー。

石井さん:でも、「手っ取り早く海外に出て、誰よりも経験積んでやる!」と発起し、何か海外経験が詰める手段は無いのかと探しているうちに、『海外インターン』という手段を見つけました。代理店に相談しに行って、自分で調べて、という感じ。

候補地探し・資金繰り・家族への説得を経て、東南アジアへ

ikiiki:学校が提供している留学制度を選択せずに個人で調べて探していったということですが、ホーチミンのほかにもインターンシップ先の候補地はありましたか?

石井さん:はい。正直に言えば、アメリカが憧れでした。だって、かっこいいですからね(笑)。しかし、調べると物価が高い、無理!月15万円が家賃に消え、食費は1回1000円なんてとてもじゃないけど生活できないと思いました。せっかくなら、自分の貯金と給料だけで生活してみたかったですし。

親には「20歳になれば立派な成人だから家を出ていくように」と幼い頃から言われており、良い機会だと感じました。思いついてから約2ヶ月で家族に相談して、最初は疑心暗鬼だった両親と兄貴にプレゼンし、話をまとめました。正直海外だったらどこでもよかったので、物価が安い東南アジアに絞り、結果、一番発展しそうなホーチミンに決めました。

ikiiki:ホーチミンで初めて会ったときには、すでに仲間ともベトナム語で会話していたりとすっかりローカルな暮らしをされていましたが、まず最初の1週間はどのように過ごしていましたか。

石井さん:「はじめての一人暮らし・初の長期滞在・上司含め周りの人ほぼ初対面・学生の友達なんて一人もいない・ベトナム人って何喋るの?」という不安でいっぱいでした、的な回答が欲しかったかもしれませんが、まったく無し!

ikiiki:いや、いわゆる的な回答を絶対にしなさそうだからこそ石井くんにインタビューしているので、むしろ「不安がまったく無い!」って回答を期待通りにもらえてよかったよかった(笑)

石井さん:不安どころか、テンション上がりまくりでした。「一人で日本人街に行ってバーに入り色んな人と話す」、「欧米人しかいかないところで英語でたくさん話して、ネイティブレベルの会話をする」、「ベトナム人しかいかないローカル店でたくさんコミュニケーションとる」、こんな感じで過ごしました。

ikiiki:せっかく異国にいるなら日本ではあり得ないシチュエーションを楽しみたいし、そのためにも『日本では体験できない、なかなか遭遇し得ない環境にまずは身を置いてみる』のは大切ですよね。石井さんらしいバイタリティを感じます。

石井さん:そして初めて、「ベトナム人はベトナム語を話す」ということを理解しました。英語はあまり使ってない。

ikiiki:「現地でリアルを知る」って、シンプルに良い経験ですよね。例えばそれがすでに知れ渡った当たり前の常識だったとしても、実際に現地で感じられたら常識以上の付加価値・体験価値がありますから。

海外進出した日本企業の、リアルな仕事現場

ikiiki:事前に持っていたイメージと大きく違った部分はありましたか?

石井さん:はい、3つあります。

①英語が思った以上に現場では使えないこと

ikiiki:それは意外ですね、ついつい英語なら通じるだろうと思ってしまいがちだけど。

石井さん:僕が勤めてたのは、ホーチミンの【高島屋】で、日本で言えば天下の百貨店ですよね。しかし、ホーチミンではまだまだ新参者のショッピングモールで、従業員も経験のない大学生ばかりです。しかも、全く英語が話せない…。

ikiiki:「インターナショナルにお客様へアテンドできるのが海外進出している企業」というイメージだったけど、まだまだ現場には課題がある感じなんですね。

石井さん:周りのスタッフも、「Where is the restroom ?」という欧米人の質問に4,5人が集まって会議するくらい。

②ベトナム人はスマートフォンが大好き

石井さん:2つ目は、ベトナム人めっちゃスマホ大好き!ホントに異常なほど。隙あらば全員スマホでFacebookを更新してます。

ikiiki:確かに、ワタシも現地で石井さんの仲間たちと会ったとき、すぐさま「Facebook教えて〜」って声かけてくれました。おかげで、短期滞在にもかかわらずベトナム人の友人いっぱいできて嬉しかったな(笑)同級生Tくんも言っていたけれど、ベトナムでは企業もオウンドメディアを持つよりFacebookページでコンタクトを取ったりPRを打ったりが主流のようですね。

石井さん:平気で「仕事なう〜」みたいのを職場でバンバンあげます。いやいやいや!となることが多かったですが、最後はよく僕も写るように。

ikiiki:良いオチだ(笑)

③日本人がイメージするよりもベトナム人はお金持ちが多い?

石井さん:3つ目は、お金持ちは本当にお金持ち。日本人の想像する”東南アジア”と、まったく違う世界。ホーチミンの高島屋では、最高級商品が立ち並びます。高級な商品を躊躇なく買うし、身に付けているのは全てブランド品というようなことが多々。

高島屋のフードエリア。色鮮やかで華やかな惣菜が並ぶ。

ikiiki:ワタシも実際に見てびっくりしたんですが、高島屋の内装と客層はいわゆる高級感があって、取り扱う品々も華やかでした。高島屋といえば、ベトナムコーヒーが飲める『ハイランズコーヒー』もお洒落で、朝の散歩ついで行ってみたりして。

ただ、高島屋へと続く交差点や周辺の道路はところどころゴツゴツした砂利道もあって整備が十分でなく、ゴミがたくさん落ちていたりして清潔とはいえない印象もありました。すぐ近くのベンタイン市場から高島屋までの道すがら、目に飛び込んでくる景色・人々の風貌、それぞれが強烈なコントラスト。まさにお金持ちとそうでない人の差が見えたり、発展している場所と未開拓のエリアが混在しているのを肌で感じました。

石井さん:僕の推測では、おそらく平均年齢がまだまだ若く、老後に対する心配が無いような気が。日本のバブル時代のようなイメージです。

ikiiki:石井さんとは現地で開催した音楽フェスにも行きましたけど、確かに一昔前の日本ってこんな感じだったんだろうな〜と。日本ではもうピーク過ぎたかな?と思えるEDMですごい盛り上がってたり、かと思えばバラードで大合唱してたり、勢いと活気が凄かった!あと、日本で言うところの「お台場」のような”THE埋立地”で開催したフェスだから、みんながジャンプすると地面がめちゃくちゃ揺れるのが面白かったですね。ちょっと怖かったけど(笑)

ホーチミンでの暮らしに必要な費用、予算ごとの生活レベル

ikiiki:仕事がお休みの日はどんな風にすごしていましたか?

石井さん:土日に高島屋で勤務して、平日は、毎日ベトナム語クラスに1日4時間通っていました。夜は、先輩に誘われれば飲みに行き、そのまま倒れるように寝ることもしばしば。

ikiiki:石井くんの目線でかまわないので、1日の生活費・1ヶ月の生活費がどんな状況だったのかを教えてください。

石井さん:1日は、1,000円あれば交通費から食費まで余裕をもって過ごせます。インターン生としては可能な限りそれ以下で抑えていました。夜は、飲みに連れてってくれた大人の方々に奢ってもらう日々でしたね。

ホーチミンで住んでいたという部屋、綺麗で過ごしやすそう。

ikiiki:親しい人を自分で積極的につくってサポートをしてもらえるのは、心理的にもお財布的にも助かるでしょうね。ローカルな場に遊びに行って会話を楽しんだり縁をつくったり、本当に大事。

石井くん:1ヶ月の生活費は、僕のイメージではありますが、だいたいの予算と生活レベルはこんな感じでしょうか。

・5万円:ローカルで切り詰めれば可能

・10万円:ホーチミンの現地感覚でいう、普通に暮らせるレベル

・15万円:日本人の感覚でいう、普通に暮らせるレベル

・20万円以上:日本にいる感覚以上に余裕をもって暮らせる

ikiiki:ローカルに馴染さえすれば、かなり費用を安く済ませられそうですね。


石井さん:知り合いは、15万円の給与で10万円程度毎月貯金してました。それほど安い固定費で済みます。

ikiiki:一時的に東南アジア圏で生活をしながら貯蓄する、資金繰りが出来たらまた違う地へ向かってみたり、勉強のための費用にあてたりしていくのも学生のうち特には魅力的ですよね。

ホーチミンでの定住生活を経て、東南アジア一周の旅へ

石井さん:ホーチミンでのインターンシップをした後は、東南アジア一周へ。そのときの予算・出費事情は以下の通りで、約50万円以下に抑えました。

【3ヶ月の東南アジア10カ国周遊の旅】

・1日:3000円(ホテル、食費、レジャー費込み)

・移動費:トータルで12万円程度(LCCでの最安値)

ikiiki:約1年間ホーチミン での定住のあと、今度はホテル泊まりで転々と東南アジアを周るとなると、刺激的かつかなりドタバタしそう。

石井さん:親に借金して、兄貴にお年玉もらいました。

ikiiki:何か大きなチャレンジしようとするとき、特に海外への渡航を含むとなるとネックになるのは資金繰りだったりもしますしね。「その時にしか出来ない経験がしたい」とアクションを起こすのも十分な動機ですし、一時的に金銭面のサポートを受けるという選択もアリだと思います。

「謙虚に挑戦する行動力」と「結果が出るまで諦めない継続力」があれば、何でも極めることができる

ikiiki:現地で過ごしていたとき、石井さんとの会話のなかで、『国内にいる日本の学生』よりも僕は一歩進んでいるんだという実感を自分自身で確かめるような表現が印象的でした。『圧倒的にほかと違うこと』へのこだわりがありそうだな、と。自尊心につながっている経験や体験は、このホーチミン滞在で得られましたか?

石井さん:僕の中で大事にしていることが2つあります。1つ目は、謙虚であること。その表れとして、常に二つ返事で全部挑戦する姿勢です。「やれる?」という質問には、「やります」と即決します。その姿勢を評価してくださる方が周りにいたことも幸いでした。

また、与えられたポジションに強みがあって、「学生×海外」という条件は常に得すると感じました。例えば何か仕事を任された時、失敗しても成功しても、「どっちに転んでも勝ちのサイコロを常に振り続けてるような印象」です。トライアンドエラーの数では負ける気がしません。

ikiiki:学生だからこそチャレンジングな姿勢を認めてもらえるというのは、確かに恵まれていますよね。もし失敗したりつまづいたとしても、挑戦すること自体が評価されるのは若いときの特権であり魅力ですね。

石井さん:2つ目に、「継続力」。ベトナム語を0ベースから勉強し、半年でネイティブと話せるようになりました。売り場のスタッフと一緒に話し合ったり、商品を販売できるまで話せるようになり、集中力と忍耐力も自信になっています。

ikiiki:ネイティブと話すことが上達の近道とはいえ、発音も独特で読みも難しいベトナム語を使いこなせるようになるのは素晴らしい努力です。

石井さん:ベトナム語を話せるようになったら仕事はしやすくなり、現地人と仲良くなり、何より武器になりました。この2つの成功体験から、「謙虚になり何事にも挑戦できる行動力」と「結果が出るまで諦めない継続力」があれば何でも極めることができる、ということを得ましたし、糧になっています。

ikiiki:さいごに、ホーチミンにいる間でよく訪れたごはん屋さんやカフェ、憩いの場などあったらぜひ教えてください。

石井さん:ホントにたくさんあるので決めることが難しいですね(笑)お酒・お料理・雰囲気が大好きなので、1店だけあげるとすれば【MODIS Dining Bar】。「レタントン」という日本人街にあるお店です。


石井さん:もし、この他にベトナム料理屋さんなどでお困りの際はぜひお気軽にご連絡くださいね。インターン期間中に結構な数のお店に行きましたから!

▼インタビューの終わりに

石井さんと現地で過ごしたとき、ベトナム人の仲間と『ベトナム語』で話す姿が印象的で、とにかくエネルギッシュ。ごはんを食べていてもイベントに遊びに行っても、店員さんやイベンターの人たちへ自分から積極的に話しかけていました。彼の人懐っこさは、周りをスッと笑顔にしてしまうようなパワーがありました。

大人になってしまったワタシからすると、思わず「あったな〜こういうベクトルのパッション!」と照れちゃうくらいの熱量で、『同世代の学生とは違うんだ感』をビシビシ放つような青年でした。学生のうちから海外に出ても自尊心を保てる経験を積めたことは、この先の人生で大きな支えになるはず。

ワタシ自身、大学時代は同級生と過ごす時間よりも大人(社会人)と過ごす時間の方がときに魅力的に思えたり、1年生から4年間はテレビ局でインターンシップをしていましたがその時間が楽しくて仕方ありませんでした。実際その経験が今の支えになっているし、あのころ頑張れた自分を思い出せばどんなことも乗り越えられる気がします。学生のうちに学校の外に出て、社会・世界を見ることの魅力は計り知れません。


でも思い返せば、大学時代の同級生でも当時から面白い活動をしている人が多くいました。自主映画を撮って大きな賞を獲ってたり(現在ドラマ監督で活躍中)、「シェアハウス×撮影スタジオ」を友達と作ってクリエイターが集まる場所を提供すると会社を立ち上げてたり(現在映像クリエイター兼CEO)、アルバイトで貯めたお金で企業したり。必ずしも、学校の外へ出て、大人(社会人)から情報を吸収するだけがすべてでは無い、とも思っています。

身近な場所にも学びはあるし、『同世代同士』だからこその自由なアイデアもある。海外に出てはじめて、日本の良さに気付くこともある。企業で大人と混じり仕事を体験をすることで、普段の学生生活ではいかに縛られず自由な想像力で議論し合っているのかに気付いたりもする。

これは学生に限らずですが、今いる環境と「外」を上手に棲み分けながらもハイブリットにアクションを起こせたら、相手の多様性を認めたり、自分自身も自由に楽しめる人間になれそうです。

新型コロナウィルスの猛威により、日本へ帰国せざる終えない状況だったり、海外渡航の予定がつかなかったりと悔しい時期。ワークスタイルや所属場所によっては思うようにコトが進まなかったり、大学生がなかなか学校にさえ行けず休学や退学を選ぶ話もよく聞きます。

それでも今、国内でどう過ごしどう成長するかは、やり方次第で大きな希望もあるはず。ワタシもまた、ホーチミンはもちろん海外へ訪れる時が来るまで、たくさん勉強して過ごしたいと思います。

ABOUT ME
ikiiki
都内を主な活動拠点とし、 週半分はオフィスワーカー/もう半分はwebライター&フードディレクターとして活動中。 【主な経歴】 ◆民放キー局にて、グラフィックデザインアシスタント ◆テレビ・映画・音楽現場でのケータリング事業 ◆ケータリングと平行して、都内飲食店でメニュー監修
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